「AIに聞いたら、うちの登録番号が違っていた」。士業や、許認可を受けて営む商売の方から、この形の相談が来るようになった。番号は、屋号や住所と違って一字ちがえば別物になる。しかもそれ自体が信用の証である。誤って答えられれば、確かめた相手は不審に思う。
当社は7月から8月にかけて、仙台市の事業者でこれを実際に見た。原因を追ったところ、AIは何も作っていなかった。
2026年7月13日、当社は仙台市の二つの事業者のサイトを整えた。構造化データを入れ、llms.txtを置き、旧URLから新URLへの転送を設定している。一か月あまり置いて、8月13日に同じ質問を三つの対話型AIへ投げ直した。
そのうちの一社、行政への届出が要る調査の会社で、腑に落ちないことが起きた。施工前のChatGPTは、届出番号を正しく答えていた。施工後、同じ質問に、公式サイトの記載とは違う番号を返した。サイトの構造化データには、正しい番号を明記してある。
当社はこのとき、同じ住所に入っている別の事業者の番号を拾ったのだろうと考えた。8月14日に出した別の記事にも、そう書いている。この見立ては、一次資料を当たる前のものだった。翌日調べ直して、違っていたことが分かった。ここで訂正する。
この種の届出は、監督官庁が受理した事業者の一覧を公表している。PDFで誰でも取れる。それを開き、県内の全事業者を一件ずつ照合した。
AIが答えた番号は、その一覧のどこにも無かった。別の事業者の番号ですらなかったのである。
では、AIはその番号をどこから持ってきたのか。回答に添えられた引用元を開くと、大手の見積比較サイトにある、その事業者の掲載ページだった。「資格・免許」の欄に、AIが答えたとおりの番号が、そのまま書かれていた。
さらに探すと、同じ番号が、提携先の企業サイトにある紹介ページにも載っていた。
並べるとこうなる。公式サイトと官庁の公表一覧は、一方の番号。見積比較サイトと提携先の紹介ページは、もう一方の番号。四つの情報源が、二つの値に割れていた。そして、後者の二つに掲載を出したのは、事業者ご本人である。
AIの誤りというと、根拠のない情報をこしらえる現象がまず思い浮かぶ。今回はそれではない。実在するページに実際に書かれている数字を、そのまま引いた。引き方としては正確である。
問題は、引かれた先の数字が古かったことにある。おそらく数年前、掲載を申し込んだときに書いた値が、そのまま残っていた。書いた本人は、自分がそこに何を書いたかを覚えていない。覚えていないものは、直しようがない。
ここに、この型の誤りの厄介さがある。公式サイトをどれだけ整えても消えない。むしろ施工の前は正しかったものが、施工の後で崩れた。AIがその回にどの情報源を採ったかで、答えが入れ替わる。当社は施工とこの変化の因果を証明できないので、施工が原因だとは言わない。分かるのは、答えが動いたという事実だけである。
やることは地味である。順に書く。
まず、自分の登録番号を、そのまま検索窓に入れて検索する。番号は文字列として珍しいので、載っているページが素直に出てくる。出てきたものを全部開く。
次に、屋号や事務所名でも検索し、番号が書かれているページを拾う。候補になるのは、業界ポータル、見積比較サイト、提携先や紹介元のサイト、所属している会の名簿、過去に配った案内のPDF、それから自分で作ったビジネスプロフィールである。掲載した記憶がないものも出てくる。
拾い終えたら、現行の値を確かめる。手元の登録証や免許証の書面を見るのが確かで、次が官庁の公表一覧になる。ただし公表一覧は更新に間があり、当社が今回見たものは2年以上前の時点のものだった。書面のほうを優先する。
そのうえで、割れているものを直す。自分の管理画面から直せるもの(見積比較サイト、ビジネスプロフィール)と、先方に依頼が要るもの(提携先、業界ポータル、会の名簿)に分ける。前者はその日のうちに終わる。後者は、いつ直るかが相手次第である。
最後に順序の話をひとつ。サイトの構造化データに番号を書き込むのは、この棚卸しが済んでからにする。逆にすると、まだどちらが現行か確かめていない番号を、機械が読みやすい形にして自分から差し出すことになる。誤りを広める側に回る。
今回、もう一つ分かったことがある。この事業者は、官庁の届出上、一つの届出番号に二つの名称が登録されていた。ところが公式サイトには、もう一方の名称がどこにも書かれていない。全文を検索して、一件も無かった。
するとAIから見た景色はこうなる。同じ住所に、別々の名前で、別々の番号を持つ事業者が二つあるように見える。両者を結びつける手がかりは、官庁の公表一覧の中にしかない。
屋号を二つ以上お使いの方は、それが同じ事業者であることを、自分のサイトのどこにも書いていない場合がある。人には自明でも、機械には分からない。会社概要に一行、旧屋号や併用名称を並べて書いておくだけで、手がかりは残る。
番号を揃えても、AIがどの情報源を採るかは決められない。揃っていない掲載がどこかに残っていれば、そこを引く回答は出る。すべて見つけきったという確証は、こちらには持てない。
反映までの日数も分からない。掲載を直しても、AI側が読み直すまでは古い答えが出続ける。当社が別の事例で見た範囲では、旧ページの転送を設定してから約2週間で回答が変わったが、それが目安になるとは言えない。
官庁の公表一覧そのものが古いこともある。今回見たものは2年以上前の時点のものだった。一覧に載っている値が現行だとは限らない。
そして、どちらの番号が正しいかは、当社には決められない。第三者が判断してよい事柄ではないからである。確認はご本人にお願いすることになる。今回も、そうしていただいた。
AIが自分の商売について違うことを言っているとき、AIを疑う前に見る場所がある。自分が過去にどこかへ登録した情報である。古いまま残っていれば、AIは律儀にそれを読む。
登録番号や免許番号が、AIの回答と手元の書面とで食い違っていないか。気になる方は、お問い合わせからご相談ください。
関連する記録として、施工の後に何が直り、何が残ったかをこちらの記事に、サイトを直してもAIだけ古い情報を答え続けた例をこちらの記事に書いています。
凪WORKS/AI来客整備。本文中の測定と照合は、2026年7月13日および8月13日に当社が仙台市の事業者2件について行った施工前後の測定と、2026年8月14日に行った情報源の照合の記録によります。事業者名、実際の番号、掲載先のURLは伏せました。届出番号について2026年8月14日付の当社記事に記した見立て(同じ住所の別事業者の番号)は、本記事で訂正しています。AIの回答は日時や利用環境によって変わります。特定の表示順位・推薦・来客数の増加を約束するものではありません。