「AIに文章を書かせているが、そのまま出すのは怖い」。この形の相談を、経営者の方からよく受ける。書かせれば速い。ただし、事実の誤りや、書いてはいけない言い回しが混じっていないかは、読まなければ分からない。結局すべてを人が読み直すのなら、速くなった分は消える。
当社は自社サイトの記事で、この問題を関所の形で扱っている。原稿はAIが書く。公開の前に、機械が決められた項目だけを検査する。一つでも引っかかれば公開しない。通れば、そのまま公開される。人が読むのは、止まったものだけである。
その関所が、今日、正しい一文を止めた。
当社の検査は、賢い判定をしない。機械が文字の形だけで判定できることに絞ってある。
効果や順位を約束する言い回しが入っていないか。社内でしか通じない呼び名や、外に出せない固有名詞が残っていないか。構造化データ(JSON-LD)が、書式として正しく読める形になっているか。雛形の差し替え漏れが残っていないか。題名・説明文・正規URLが空でないか。本文から張ったリンクの先が、実際に存在するか。見ているのは、この六つである。
どれも、意味を読み取る必要がない。判定に迷いの出ない項目だけを並べてある。迷う項目を機械に任せないための線引きである。
2026年8月19日の午前10時30分、自動の検査が動き、当社が運用するもう一つのサイト(宮城県の補助金を案内するサイト)に上がってきた新しい原稿を、一本止めた。理由は禁止語だった。
止まった箇所は、こういう文である。補助金の額について、県が請け合っているわけではない、と読者に注意する一文。誤解を招かないよう、わざわざ書き足した否定文だった。その中に、約束を意味する二文字の語が、否定の形で入っていた。
検査には、免責の言い回しを除く仕組みも入れてある。「——するものではありません」という形は断定ではないので通す、という具合に。今日の原稿は「——しているものではありません」だった。「する」と「している」。この違いで除外の一覧に一致せず、検査は語だけを見て止めた。
ちなみに、この記事でその語を直接書いていないのは、書けば当社のこの記事も同じ検査で止まるからである。関所は身内にも同じだけ鈍い。
直せばよいではないか、と思われるかもしれない。文脈を読ませればよい、と。実際、今のAIなら「これは否定文だから問題ない」と判定できる。
それでもそうしないのは、二つの誤りの重さが違うからである。
誤って止めた場合に失うのは、人がその一本を読む数分である。誤って通した場合に失うのは、書いてはいけない言い回しが自社サイトに載ったという事実そのものになる。士業や補助金のように、公的な制度を説明する文章ならなおさら重い。
判定を賢くするほど、通す側の判断が増える。賢さは、たいてい「これくらいは大丈夫」の方向に働く。だから関所は鈍いままにして、鈍さの分を人が引き受けることにしている。速くするのはAI、公開してよいかを決めるのは人。当社が役割を分けてAIを運用している記録でも、この線は同じ場所に引いてある。
AIに文章を書かせている方が、明日から試せる形にしておく。
一、止める語の一覧を、短く作る。効果の約束、順位の約束、最上級の言い方、外に出せない固有名詞。十語ほどあれば足りる。長い一覧は、作った本人も覚えていられない。
二、止まった理由を、記録に残す。どの語で止まり、その前後にどんな文があったか。当社は前後25文字を一緒に残している。この記録がないと、後から一覧を直せない。
三、止めた原稿を、機械に消させない。書き直させもしない。置いたまま止め、人が見るまで待たせる。自動で直させると、なぜ止まったかが消える。
四、誤って止まったときは、語を一覧から消さない。例外の言い回しを一つ足す。今日の一件なら「している」の形を例外に足す。語ごと消せば、本当に危ない一件まで通ってしまう。
五、例外を足したら、その形を含む過去の記事を検査し直す。緩めた網で、前に止めたものを取りこぼしていないかを確かめる。
六、止まったことに気づく道を作る。止めるだけでは、誰も見ないまま何日も止まっていることがある。当社は検査のたびに記録を一つ残し、それを朝に人が見る形にしている。
機械の検査が見ているのは、書いてあることだけである。事実の誤り、古い数字、出所の分からない主張は素通りする。今日止まった一本も、止まった理由は語の一致であって、内容が正しいかどうかは検査していない。ここは人が読むしかない。
例外を足すほど、網は緩む。緩めた理由の記録が残らなければ、半年後には誰も説明できなくなる。一覧と例外は、増えたら見直す前提で持つものだと考えている。
止まった原稿は、人が見るまで止まったままである。当社でも、8月13日の朝に止まった一本が、翌14日の昼まで置かれたままだった。丸一日を超えている。関所は、後ろに人がいて初めて機能する。
そして、この鈍さで足りるのは文章までである。金銭の支払い、顧客データの書き換え、外部への送信。取り返しのつかない工程では、語の一致で止める程度の検査では足りない。当社は、そうした工程をそもそも自動にしていない。
AIに書かせる速さと、公開してよいかを決める速さは別のものである。前者は伸ばせる。後者を伸ばそうとすると、事故になる。関所は、その二つを切り分けるための道具にすぎない。
自社の記事や案内文をAIに書かせていて、公開前の見方に迷いがある方は、お問い合わせからご相談ください。
凪WORKS/AI来客整備。本文中の検査の記録は、2026年8月19日午前10時30分に当社の自動検査が出力した社内の実行記録によります。止まった原稿は当社が運用する自社サイトのものであり、顧客の原稿ではありません。検査の項目と例外の扱いは当社の運用時点のもので、今後変わる可能性があります。